徳山藩の人々

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help リーダーに追加 RSS とうとう最終回・・・六月のブログコラボ『ジューン・ブライド』

<<   作成日時 : 2008/07/16 08:51   >>

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 自分と向き合う
 それはここへ入ってから友一には当たり前のことだった。
 そして、友一の中の友一が出す答えはひとりで生きていく。ただ、それだけ
 だった。妻や娘にも会うことはない。父親としての幸せは殺人を犯したあの日
 放棄したのだから。
 友一は模範囚なので仮出所できるぞとこの前刑務官に告げられた。
 本来なら喜ぶ知らせだが友一のこころには奇妙な落胆が広がっていた。
 刑務所にずっと居たいとは思わない。だが、ここにいれば生活の心配はしなくても
 いいし、皆、罪を犯した者達だからここを出て友一が一生背負っていかなくて
 はならない前科者の烙印を見て見ないふりも出来る。
 結局、安住の地はどこにもないのか
 これも人を殺した罰なのだろう。友一は諦めていた。
 ラジオは淡々と話を続けている。「父さんに会えなくなって五年以上経つね。
 母さんや私からの手紙に返事を書かずに送り返すけど、私達は父さんが
 刑務所にいる限り、手紙は書きます。父さんの考えてることわかるよ、自分は人殺し
 だから私達に迷惑がかかる。だから、もう、私達との縁を切る・・・。でもね、父さんは
 そのつもりでも世間はそうは見ない。見てはくれない。苦しいのは私達も同じだよ。
 だから、手紙にはどんなに短くてもいいから返事を下さい。そうそう、大切な報告を
 しなくてはなりませんでした。私は先月結婚しました。ジューンブライドだね。お腹に
 子供がいます。女の子だよ。相手、知りたいでしょ。二つ年下の同じ職場のひと。
 ホントは父さんが
 出所してから籍を入れようって彼と話してたんだけどね。赤ちゃんができたから・・・。
 父さん、怒らないでね。」
 「怒るわけないぞ!」「そうじゃ、ようやった!」声を上げたのは友一の知らない
 年配の受刑者数人だった。いつもは規則に従い、感情を殺し、大人しくしている
 男達の目が潤んでいた。
 「結婚は母さんは賛成してくれたけど彼のご両親には反対されました。理由は
 父さんの罪。でも、彼と私のこころは揺るぎませんでした。今は一緒に暮らしています。
 父さん、だからお願いです。出所したらこっちに戻ってきて。私達はみんな父さんを待って
 います。生まれてくる子供には父さんの名前から男なら友樹、女の子なら友香って決めて
 ます。」
 もしかすると・・・。友一のこころは激しく波打ちそして歓喜に包まれた。この投書の主は
 俺の娘だ!俺に孫が出来るのか・・・人殺しの俺に・・・。友一は両手で顔を覆った。
 とめどもなく涙が溢れて止まらない。
 「このラジオのことは弁護士の高尾先生に聞きました。私達が父さんに結婚のことを
 報せたいと困っていたらこれがあるって教えていただいたのです。父さん、聞いて
 ますか。私達は父さん待っています。これを聞いたら私達からの手紙読んで下さい。
 お願いします。」
 投書を読み終わると聞いていた受刑者たちの反応は涙ぐむ者、我関せずという
 無表情の者、顔をしかめ、不愉快そうな者とさまざまだった。
 友一は幸せだった。闇夜だと思っていた自分の人生にあたたかい光を見つけたの
 だから。
 「友さん、良かったな」
 和夫が微笑み、友一の肩に右手を置いた。友一はその手を力強く握り締めた。
 ここを出たら、みんなに会いに行こう。俺の家族に。
 友一は今夜の出来事は一生忘れられないと思った。
 完
 
 

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