徳山藩の人々

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help リーダーに追加 RSS 『徳山藩の人々』番外編七月のブログコラボ「家出」前編

<<   作成日時 : 2008/07/31 00:28   >>

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 岐山の山々は秋を迎え、赤く色づいていた。
 その山道をゆっくりと下るひとりの少年がいた。
 その少年の名は専之助。彼にはある〈秘密〉があった。それはこの話を
 読めばお分かりいただけよう。
 専之助は拾った紅葉の葉を無心にくるくる回していた。秋の陽は西へその傾きを
 早めている。
 (さて、そろそろ帰らねば)
 専之助は武士の子である。勝手気ままに外歩きをしていい自由は彼には
 ないはずであった。しかし・・・。
 山歩きをしやすいように軽装に身なりを整えた専之助は供も連れず、腰には
 何か気が付いたときに書き物をするための筆と帳面が手製の皮袋の中に入れて
 括りつけてある。彼は今日のような時間を小さな旅と呼んだり家出とも呼んでいた。
 後に・・・父の後を継ぎ就馴(なりよし)と名乗る彼は側近の者にこう語って
 いたという。
 「机の上の勉学は確かに大事じゃ。しかし、外に出て様々な人々と接し、語り合い、
 見聞を広める。これは万巻の書を読むよりも人の上に立つものには必要であると
 わしは思うのじゃ。」
 さて、話を元に戻そう。専之助が山道を下っていると前方の茂みで人の話し声が
 聞こえてきた。専之助は声の聞こえる方へ歩を進めた。声の主は二人で男だと
 程なく分かった。やがて倒れた木に腰掛けて話す竹籠を担いだ二人の百姓たちが
 専之助の視界に入った。専之助は彼らに見えないように用心深く身を隠し、
 その話に耳を傾けた。
 先に口を開いたのは白髪頭の実直そうな男だった。
 「ようやっと、粗朶が終わったの」
 「んだ。昨日は雨じゃったから道が滑って大変じゃったが今日はええ按配で。」
 男達は満足そうにうなづくと竹筒の水を飲み干した。
 「のう、太吉さあ」
 「ん」
 太吉と呼びかけた男は心配そうな顔つきで大きくため息をついた。
 「どした、新八。かかあとけんかでもしたか」
 「いや。おらの心配事はほかのことだ」
 「ほかというと・・・」
 新八は団栗まなこを見開いて俯き「おら、上方へ出稼ぎに行こうと思う」
 と言った。
 太吉は新八の肩に手を置き「そうか・・・ついに決心したか」と言うと鼻をすすった。
 「さとの薬代の借金に兄さのばくちの借金の肩代わり、おまけに年貢が上がるときたら
 もう、おしのの繕い物の内職とわしの稼ぎじゃ追いつかん。」
 太吉は何も言わず新八の顔をじっと見つめた。
 続く
このブログコラボについて
 このブログコラボは『Shiozyの介護日記』https://iiiro.jp/blog/shiozy/
 の企画から生まれた作品です。今度、ここでの好評連載エッセイが一冊の本になりました。
 題名は『妻のために生きる』です。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
おっ、時代劇仕立ての小説か。
この前振りからみると、今回も長くなりそうな予感。
息切れせずに書くように。(笑)
Shiozy
URL
2008/07/31 15:00
Shiozyさんへ
お言葉通りにするといつまでたっても万役山事件が終わらない。新しい登場人物も控えているのでこれは前・後編で終わらせます。
misae
URL
2008/07/31 15:31

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