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徳山藩の人々
ブログ紹介
「自分の足元の歴史を知りたい」それがこのブログを始めたきっかけでした。今、毛利藩の支藩徳山藩の改易(取り潰し)とその再興までの道のりを『万役山事件』として連載中。混迷の時代を己の信条に従って道を切り開いた男奈古屋里人が主人公です。

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タイトル 日 時
万役山事件 新たな同志その一
万役山事件 新たな同志その一  享保三年(1718)年。京の都は若葉の季節を迎えていた。   奈古屋里人が京に来て一年余りの時が流れていた。   彼は今何をしているのか・・・。読者になり代わり作者が彼の日常を覗いて   みよう。   時は昼下がり。場所は一条・室町通りの扇問屋伊勢屋幸兵衛方である。   京の室町通りは各大名家に出入りを許されている商家が軒を連ねている。   しかし、伊勢屋はそのような老舗の名店の豪奢さや煌びやかさなどみじんも   感じさせない佇まいを保っている。店の表には萌黄色の地に店の屋号を... ...続きを見る

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2008/08/27 08:41
『徳山藩の人々』七月のブログコラボ「家出」後編その二
 障子を開けた室の中で専之助が見たもの。  それは白装束に身を包んだ二人の男たちであった。  (・・・これはどうしたことじゃ)  武士の子息の嗜みとして大声を出すことはしなかった。だが押さえ込まれた感情は  行き場を求め、専之助の体を駆け巡った。  一方、当の男達は悠然とその場に鎮座している。たまりかねて、専之助は二人の  男達の前に座ると二人が当主の子へ平伏するのを待たず年上で身分も上の  鳥羽市右エ門へ「鳥羽よ、この有様は、な、なんとしたことじゃ」  とかすれ声で詰問した。鳥... ...続きを見る

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2008/08/14 21:50
『徳山藩の人々』番外編七月のブログコラボ「家出」後編その一
 それから専之助は一刻(二時間)余りふたりの百姓の話を聞き続けた。  彼らの話は家族や村、そして日々の暮らしのことが中心だった。  中でも専之助が耳を傾けて聞いたのは年貢に関する話である。  上方へ出稼ぎに行くという新八も村に留まる太吉も年貢の負担について  不満を語り続けた。  〈父上も楽ではないの、ご先祖様の借金で民から恨まれる〉  専之助は床についても藩の財政のやりくりが頭から離れぬとかつて言った  父の苦渋に満ちた顔を思い出した。それは後を継ぐ者たちに代々受け継がれて  ... ...続きを見る

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2008/08/11 08:49
『徳山藩の人々』番外編七月のブログコラボ「家出」前編
 岐山の山々は秋を迎え、赤く色づいていた。  その山道をゆっくりと下るひとりの少年がいた。  その少年の名は専之助。彼にはある〈秘密〉があった。それはこの話を  読めばお分かりいただけよう。  専之助は拾った紅葉の葉を無心にくるくる回していた。秋の陽は西へその傾きを  早めている。  (さて、そろそろ帰らねば)  専之助は武士の子である。勝手気ままに外歩きをしていい自由は彼には  ないはずであった。しかし・・・。  山歩きをしやすいように軽装に身なりを整えた専之助は供も連れず、... ...続きを見る

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2008/07/31 00:28
本編再開の前に・・・『これが事件の現場だ!』万役山事件の現場リポート
本編再開の前に・・・『これが事件の現場だ!』万役山事件の現場リポート  暑中お見舞い申し上げます。しばらくお休みをしていましたが次回より  再開です。今回は万役山事件の場所が判明しましたので写真入りのレポートを  お送りします。  まず、この写真をご覧ください。 ...続きを見る

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2008/07/20 23:18
とうとう最終回・・・六月のブログコラボ『ジューン・ブライド』
 自分と向き合う  それはここへ入ってから友一には当たり前のことだった。  そして、友一の中の友一が出す答えはひとりで生きていく。ただ、それだけ  だった。妻や娘にも会うことはない。父親としての幸せは殺人を犯したあの日  放棄したのだから。  友一は模範囚なので仮出所できるぞとこの前刑務官に告げられた。  本来なら喜ぶ知らせだが友一のこころには奇妙な落胆が広がっていた。  刑務所にずっと居たいとは思わない。だが、ここにいれば生活の心配はしなくても  いいし、皆、罪を犯した者達だか... ...続きを見る

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2008/07/16 08:51
七月だけどもう少し続きます・・・六月のブログコラボ『ジューン・ブライド』
 前回までのあらすじ  借金返済のトラブルから殺人の罪を犯した友一。己の罪を深く悔いる  彼は家族と縁を切ろうとするが妻は頑としてそれを拒絶した。  刑務所生活の中で若い受刑者と奇妙な交流も生まれ、単調な  日々の中に一抹の暖かさを見つける友一だった・・・。    スピーカーから流れる曲は石川さゆりの天城越えに代わっていた。  「友さん、今度の慰問会誰が来るか知ってますか」  「えーと、なんか劇団が来るんだろ」  「劇団!」和夫は顔をしかめた。  「やですよ、劇団ってほら、三... ...続きを見る

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2008/07/14 08:46
七月だけどまだ続く六月のブログコラボ『ジューン・ブライド』
 殺人という罪を犯し長年、ここで暮らしてみると罪といってもさまざまな理由が  あり、犯した者もまた同じだという当たり前の事実がある。  それは外の世界で暮らしていた自分では分からなかったと友一は思う。  目の前にいる和夫もそうだ。この自分より年下の涼しげな目元を持つ青年の  犯した罪は詐欺の常習でここに来たのは騙した女に逆ギレされてナイフで  襲われ、その時はずみで女の腹を刺してしまって殺してしまったのだった。  友一が驚いたのは和夫が女を殺したことを後悔していないと言ったことだ。 ... ...続きを見る

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2008/07/09 08:56
六月のブログコラボ『ジューン・ブライド』後編その二
 判決は懲役八年だった。友一は控訴しなかった。  どんな理由があろうと相手を殺してしまった事実。それで自分の人生は終わったと  思っていた。ただ、心残りは家族のこと。  〈加奈子、恵・・・すまない。俺はお前達を守れなくなっちまった〉  友一は離婚届を留置場から送ったが妻の加奈子は承知しなかった。  あれはいつのことだろう。最後に加奈子と面会した時、加奈子はやつれ果てた  顔で友一の前に現れた。しばらくふたりとも沈黙していた。  しばらくして加奈子がトートバックの中から封筒を取り出し... ...続きを見る

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2008/06/28 21:38
六月のブログコラボ『ジューン・ブライド』後編のその一
 あの六月。市井の無名の男から殺人犯に堕ちたあの日。  友一は苦い追憶に心を浸した。以前の友一は小さい小料理屋を営んでいた。  妻と一人娘との穏やかで静かな生活に友一は満足していた。  〈それを壊したのは俺だ〉  原因は友人に頼まれ断りきれずに引き受けた借金の保証人だった。  二百万の金。借りる前は土下座して涙を流し必ず返すから、と言ったその男は  半年後に行方不明になった。  〈それからは坂を転がり落ちていったな・・・〉  その借金には性質のよくないヤクザが絡んでいた。当然、毎... ...続きを見る

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2008/06/26 01:24
今回はブログコラボに参加してみました。タイトルは『ジューン・ブライド』前編
 数少ない『徳山藩の人々』読者の皆様へ  今回は本編から遠く離れてshiozyの介護生活https://iiiro.jp/blog/shiozy/さんのブログ  とのコラボレーションをやってみました。何をするかというと今回のお題「ジューン・ブライド」  に関するブログをそれぞれ創作し、紹介しあうという試みでございます。  misae版『ジューン・ブライド』こんな話でございます・・・。  午後七時。宇多田ヒカルの軽快な歌声が食堂のスピーカーから響き渡る。  そしてその声に被さる絶妙のタ... ...続きを見る

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2008/06/25 00:10
万役山事件 雲の行方その七
 元次の好む男とは主君へのゆるぎない忠義心をもち、その上に打てば響く 才知と感性の鋭さを併せ持つ男だった。  その基準からすると目の前の狛犬こと義信はまるで駄目な男である。  〈これも御家を潰した己への罰か〉  元次は密かに自嘲する。  〈あり得んことだが・・・。ここに里人がおればの〉  自分が追放し、二度と会うことが出来なくなった家臣である。  〈失って初めてその大切さ、存在の重みが分かるとかつて誰かが言うて おったが・・・〉  こうして故郷を離れ、他国へ一人流され... ...続きを見る

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2008/06/19 00:35
万役山事件 雲の行方その六
 さやさやさや・・・。どこかで笹の葉が鳴っている。  どうしたことだろう、わしは徳山の館にいたはずなのに。  元次は重い瞼をゆっくり開ける。淡い光が鋭く眼を貫く。  途端に聞こえてきたのは聞きなれた低く鈍重な男の声だった。  「お目覚めでがんすか。ご夕食の時間でやんす」  声の主は義信だった。狛犬と声に出しかけて危うく止める。  鈍重で表情の変わらない四角い顔を持つ忠実さがとりえの自分の世話人を  元次は心の中で密かに狛犬とあだ名を付けていた。  「うたた寝をしておった、すまぬ」... ...続きを見る

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2008/06/07 23:08
 万役山事件 雲の行方その五
 元次と母が室の中に入ると元次は〈おや・・・〉と思った。  父ひとりだと思っていた場所に武士の、それも位が上の家の子供であると  わかる身なりの整った男子が父親の側に座っていたからである。  その子供も元次たちをじっとまばたきもせず見つめている。  その子供と目を合わせた途端、元次のこころになにか鋭い衝撃が走った。  〈もしかすると、これがわしの弟、なのか〉  それは直感だった。それが正しいことはすぐに判った。  最初に行動したのは傍らの母だった。きちりと両手をつけ平伏すると少しか... ...続きを見る

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2008/05/28 08:57
万役山事件 雲の行方その四
 元次は母共々初めて岐山の御館へ呼ばれた日のことはいまでも鮮やかに  思い出せる。  母は心なしか青ざめていた。そのような顔の母を元次は見たことが無かった。  〈母上、なぜそんな顔をされるのですか〉元次は尋ねようとした。しかし、自分の手を  握り締める汗ばんだ母の手の力強さと何を言うにも今まで遠くに見ることしか  出来なかった御館の中に入れるという子供らしい好奇心がそれらのささいな疑問を  吹き飛ばしていた。  御館の門は確かに大きかった。だが京育ちの元次(本来なら幼名の賢富と ... ...続きを見る

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2008/05/20 08:32
万役山事件 雲の行方その三
 大名家の親子関係は町人の場合とは異なる。 子が誕生した後、両親が側で養育せず、乳母や家臣から選ばれた守り役などと呼ばれる  人物が生まれた子の成長を見守るのだ。  当然、肉親の情は育ちにくくなる。  それは大名家の子として生まれた元次にも理解できることであった。  だがわしと父上は違う。  住吉丸の船上で学問を愛し、自分を尊敬する人々と至福の時を過ごしながら  元次は鈍い痛みの伴う暗い回想に浸っていた。  幼い日、初枝から聞かされた自分の誕生にまつわる事実。  これが初枝... ...続きを見る

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2008/05/13 08:07
万役山事件 雲の行方その二
 父の就隆に対しての元次の思いは複雑である。  〈父上はわしを疎み弟の元賢を慈しんでおられた〉  船の上で周囲から勧められる酒盃を重ねながら元次はひとり追憶に耽っていた。 父に関する記憶で常に思い出されるのは薄暗い室の中でいつ来るとも  分からない父を待ち続ける母の姿だった。  ははうえ、どうして泣いておられるのです。  幼い元次の質問に母は目を泣き腫らし、こう答えるのが常であった。  そなたは知らなくて良いことです。と。  しかし、その答えはすぐにわかった。詮索好きでおしゃ... ...続きを見る

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2008/05/03 20:54
万役山事件 雲の行方その一 
 春の穏やかな日差しが船に乗る一同に降り注いでいた。  船の名は住吉丸。元次が新しく作った船である。その船に集うのは儒者伊藤東涯、  烏山輔寛。さらに文会堂書店の林義端。  さらに徳山藩藩士の長沼玄珍と水津寿全。彼らは元次の招きに応じ、春のひとときを船上で  過ごすため伏見から川下りに漕ぎ出したのである。  身分の差はあるとはいえ、学問の徒という共通のつながりが彼らにひとつの和をもたらしていた。  「公方様がお亡くなりになられましたな」  よく通る声で東涯が言うと隣に座っていた義端... ...続きを見る

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2008/04/26 12:14
万役山事件 京の春その五
 青蓮院からの帰路里人は考えた。  〈町人の姿にするのは宮様にお目通りが叶ってからにしよう〉  まだ、もう少しこの姿のままで。  そんな気持ちがこころに燻ぶっている。  いかぬな。  里人はうすく自嘲の笑みを浮かべた。  〈姿は変えてもこころは武士だというのに〉  不意に肩口に人がぶつかってきた。軽い衝撃で里人は後ろに一、二歩下がる。  「申し訳ありまへん、申し訳ありまへん」  どこかの商家の丁稚だろう、風呂敷包みを背中に負い、顔にそばかすの残る  少年だった。里人は鷹揚に手... ...続きを見る

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2008/04/17 00:06
 万役山事件 京の春その四
 〈久しぶりだな、この樟〉  里人は懐かしさと幾分の緊張のこもった目で青蓮院の石垣の上にある大樟  を見つめた。今日の里人は侍の姿のままだった。  〈いきなり、町人の姿でご訪問しても、の〉  相手は各大名家のみならず幕府のお歴々も弟子に連なる宮家である。  止むに止まれぬ事情があるとはいえ落魄した一浪人がその情けにすがるなど  本来は許されざることといってもよい。  里人はその垣根を飛び越え、己の本懐を遂げるべく行動を起こそうとしていた。  里人はまず宮様にお仕えする家扶や家令た... ...続きを見る

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2008/04/09 08:13

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